テストステロン補充療法(TRT: Testosterone Replacement Therapy)は、男性ホルモン値が低下した方への治療法です。LOH症候群(男性更年期障害)の主治療として、世界的に広く実施されています。本記事ではTRTの基礎を解説します。
テストステロンとは
テストステロンは男性ホルモンの代表格で、精巣(睾丸)で約95%が生成されます。男性の身体・精神・性機能に幅広く関与します。
主な働き
- 筋肉量・骨密度の維持
- 性欲・性機能の維持
- 精子の生成
- 赤血球の生成
- 気分・意欲の調整
- 体脂肪率のコントロール
テストステロンの加齢変化
男性のテストステロン値は20代でピークを迎え、その後年に1〜2%ずつ減少します。50代では20代の70%程度、70代では50%程度になります。
ただし、減少のペースには個人差が大きく、生活習慣・ストレス・体型・既往歴によって影響を受けます。
TRTの適応
テストステロン補充療法は誰でも受けられるわけではありません。以下の条件を満たす方が対象です。
- 遊離テストステロン値が基準値以下(8.5pg/mL未満が目安)
- AMSスコア(男性更年期症状質問票)で中等度以上
- 症状(疲労感・抑うつ・性欲低下等)が日常生活に影響
- 前立腺がん・乳がんの既往がない
- 重度の心臓病・睡眠時無呼吸症候群がない
TRTの種類
1. 注射(筋肉注射)
日本で最も一般的な方法。エナント酸テストステロン(エナルモンデポー)を2〜4週間に1回、筋肉に注射します。
- 費用:1回3,000〜8,000円
- メリット:確実に薬効、医師の管理下
- デメリット:定期通院が必要、注射の痛み
2. 経皮ジェル
テストステロンを含むジェルを皮膚に塗布する方法。海外では一般的ですが、日本では未承認。
3. 経口薬
飲み薬タイプ。日本ではあまり用いられません(肝機能への影響が懸念)。
TRTの効果
多くの場合、治療開始2〜3ヶ月で以下のような改善が見られます。
- 疲労感・倦怠感の改善
- 気分の安定
- 性欲・勃起力の回復
- 筋肉量の維持・増加
- 体脂肪の減少
- 骨密度の改善
個人差はありますが、QOL(生活の質)の大きな改善が期待できます。
副作用とリスク
主な副作用
- 多血症(血が濃くなる):定期的な血液検査で監視
- ニキビ・脂性肌
- 男性型脱毛症の悪化
- 睡眠時無呼吸症候群の悪化
- むくみ
- 女性化乳房(まれ)
長期リスクの懸念
- 前立腺がんの進行(既往例で禁忌)
- 心血管疾患リスク(議論中)
- 精子形成抑制(妊娠希望者は注意)
治療中のモニタリング
TRTを安全に続けるには定期的な検査が必要です。
- テストステロン値の測定(3〜6ヶ月ごと)
- 血液一般検査(赤血球数・ヘマトクリット)
- PSA値(前立腺がんマーカー)
- 肝機能・腎機能
- 脂質・血糖値
受診先と費用
男性更年期外来、メンズヘルスクリニック、泌尿器科で対応可能です。基本的に保険適用で受けられますが、検査値が基準を満たさない場合は自費診療となります。
- 初診・検査:5,000〜15,000円
- 注射1回:3,000〜8,000円(保険適用時は1,000〜3,000円)
- 定期検査:3〜6ヶ月ごと5,000〜10,000円
注意:個人輸入とアンダーグラウンド
海外通販・個人輸入でテストステロン製剤を購入する方がいますが、これは非常に危険です。
- 偽造品・低品質品のリスク
- 適切な検査なしでの使用は重大副作用
- 違法薬物との誤認
- 多血症・心臓発作などの事故
必ず医療機関を受診し、医師の管理下でTRTを受けてください。
男性ホルモン治療の最新情報は日本泌尿器科学会のサイトで確認できます。